2009年1月30日金曜日

Perioperative Cardiovascular Evaluation and Care for Noncardiac Surgery

Perioperative Cardiovascular Evaluation and Care for Noncardiac Surgery

ACC/AHA 2007 Guidelines on Perioperative Cardiovascular Evaluation and Care for Noncardiac Surgery
A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines (Writing Committee to Revise the 2002 Guidelines on Perioperative Cardiovascular Evaluation for Noncardiac Surgery)
Journal of the American College of Cardiology Vol. 50, No. 17, 2007
October 23, 2007:e159-241


心臓の術前評価

非心臓外科手術の術前評価について、 ACC/AHAガイドラインが2007年に改訂されました。
先日から何度か日本の現状と大きな違いがあることを指摘していましたが、具体的に検討してみたいとおもいます。

アルゴリズムを見ていただいたら、一目瞭然です。

1、緊急手術の場合は手術を優先させる。
2、UAP、HF、不整脈、弁膜症の症状がある場合は、その疾患に応じた検査、治療を優先させる。
3、手術が低リスクの場合は、手術優先。
4、4MET(ごみ出しや皿洗いなどの軽労作)以上可能であれば、手術優先。
5、虚血性心疾患、心不全(既往も)、DM、腎機能障害、脳血管病変のリスクファクターのうち
1)3つ以上で 血管手術:検査を考慮
2)3つ以上で中等度リスクの手術、または1つか2つの場合:βブロッカーなどを用いてレートコントロールしつつ手術するか、非侵襲的検査をする
3)リスクなし:手術する
 

大きな変更の1つは、術前負荷試験、冠動脈造影を必要とするグループが非常に少なくなった事です。

PCIに関しては、ステントを入れる前に患者が近い将来手術が必要かどうかを確認する事、非薬剤溶出性ステントの場合は30-45日間、薬剤溶出性ステントの場合は365日間は、延期できる手術は延期する事。さらに、手術が必要になってしまった場合は、アスピリンはそのまま続け、clopidrogelやticlopidinは手術直後に再開する。

たとえばAAAの術前にCAGを行った際、無症状でもタイトな1枝以上病変が見つかることが良くありますが、こういった場合、治療が必要ないのでしょうか?痛い目にあった経験がありますが。。。

2009年1月26日月曜日

Survival benefit of aortic valve replacement in patients with severe aortic stenosis with low ejection fraction and low gradient with normal ejection

Survival benefit of aortic valve replacement in patients with severe aortic stenosis with low ejection fraction and low gradient with normal ejection fraction.

Ann Thorac Surg. 2008 Dec;86(6):1781-9.

Pai RG, Varadarajan P, Razzouk A.

Division of Cardiology, Loma Linda University Medical Center, Loma Linda, California, USA.


Severe AS (UCG; AVA<0.8)の患者の長期予後。
結論はEF低下例であっても、正常例であってもAVRによる生存率の改善が見込めるため、積極的にAVRをするべき。ということ。

EF低下群でPGが出ない患者にAVRが著効することがあるのは、よく知られています。
ただEF正常で、PGも少ない患者というのは、どんな患者なのか、良く分かりません。実際にあまりいない様な気がするんですが。

長期のフォローもされており、非常に良い点を突いていると思います。以下の問題点がなかったら、さらに良い論文になっていたと思います。

問題点は、
1、群分けのバイアス;どうしてもAVR群は、全身状態の良い患者を外科医は選んでしまう。
2、フォロー中にASが進行するとAVR群へ回ってしまう。
3、死因について述べられていない。

2009年1月19日月曜日

Endoleaks following endovascular repair of thoracic aortic aneurysm: etiology and outcomes.

J Endovasc Ther. 2008 Dec;15(6):631-8.
Morales JP, Greenberg RK, Lu Q, Cury M, Hernandez AV, Mohabbat W, Moon MC, Morales CA, Bathurst S, Schoenhagen P.
Cleveland Clinic, Cleveland, Ohio, USA

502例のうち、除外された200例を対象。endoleakは約20%に発症。追加インターベンションタイプ1(79%),3(57%)はが必要だが、タイプ2(24%)は少なく、経過観察で消失することが多い。ただし臨床上一番問題となる原因不明で瘤拡大が認められる症例は除外されている。
Endoleak危険因子はcarotid-subclavian bypass (p = 0.0001) とlengthy aortic coverage by the stent-graft (p = 0.005)
Zenith stent-graft(17%, n = 39) が少なく、Gore or Talent devices(34%, n = 10)が多い。

2009年1月16日金曜日

ヘパリンを使用せずにPCPSを離脱する方法

ヘパリンを使用せずにPCPSを使用した場合、2000回転以下で回路内凝固が進んでしまうため、離脱が難しい。ヘパリンを使えば簡単だが、出血がひどく、ヘパリンを使用できない場合の抜き方は、PCPS回路が詰まらないように、側枝から送脱血管内に生食を流してもらい、さらにシャントを使って回しておくことで凝固を防げる。この間に離脱し、しかもいつでも再開可能である。

2009年1月14日水曜日

ACCF/SCAI/STS/AATS/AHA/ASNC 2009 Appropriateness Criteria for Coronary Revascularization

最近のトピックスです。アメリカの有名な循環器系学会、内科、外科、インターベンション、核医学が集まって、虚血性心疾患に対する治療の新たなガイドラインを作成しています。

以前、医療過誤専門の弁護士さんが講演で言ってましたが、
ガイドラインに反することは、よほどの理由、裏づけがないとやってはいけない。
とのことでしたので、ガイドラインの遵守ということは、現代医療においては大切です。

今回のポイントは、無症状、低リスクの場合、PCIはかなり否定的になっています。
PCIは、2枝病変でLAD中枢病変の場合、適切だが、3枝病変では不明、LMTのある場合は不適切!とされています。これは日本の実情とかなりずれています。

ACSに関しては、発症後12時間以上のSTEMIで症状が安定しているものは、血行再建の適応ないし、緊急CAGの必要すらない。またPCIや血栓溶解療法で責任動脈の治療が成功した後、症状が安定しているなら、他の動脈の血行再建は不適切である。とこれも踏み込んだ意見です。

2009年1月13日火曜日

HOCMの治療

MRI
造影遅延が予後悪い
病理
MRとの関連は興味のあるところ。

肥大型心筋症の外科治療の適応
Class Ⅰ :
 1.NYHA Ⅲ度以上の症状を有し,薬剤抵抗性で,安
静時に50mmHg以上の左室流出路圧較差を認める
HOCM
 2.意識消失発作から回復し,安静時ないし薬物負荷
時に50mmHg以上の左室流出路圧較差を認め,薬
物抵抗性のHOCM
Class Ⅱ :
 1.心症状は軽度ないし認めないが,薬剤抵抗性の,
安静時に50mmHg以上の左室流出路圧較差を認め
るHOCM
Class Ⅲ :
 1.無症状ないし薬物療法にてコントロール可能な
HOCM
 2.症状はあるが運動あるいは薬物負荷試験にても左
室流出路圧較差のない肥大型心筋症

肥大型心筋症治療のガイドライン

I.日常生活の管理

運動:軽いスポーツを除き、原則禁止する。

性生活:予め充分な内科治療を受け、安定した状態にあることを前提とする。

妊娠:出産時には抗生物質の投与が考慮される。

飲酒・喫煙:好ましくない

遺伝カウンセリング:遺伝相談が必要な場合がある。

II.薬物療法

無症状または軽度症状の場合:ベータ遮断薬、ベラパミル

心不全症状がある場合:ベータ遮断薬、ベラパミル、ジルチアゼム、ACEI,ARB,利尿薬

不整脈がある例:突然死予防のためにはアミオダロン、カテーテルアブレーション、心房細動例ではワーファリンの投与

III.非薬物療法

NYHAⅢ以上、薬剤抵抗性、圧較差50mmHg以上の閉塞性肥大型心筋症の場合には心筋切開・心筋切除などの外科的治療や中隔塞栓術が考慮される。また、突然死のハイリスク例ではICD植込みの対象となり得る。

2009年1月7日水曜日

INDICATIONS FOR SURGERY OF VSD

INDICATIONS FOR SURGERY OF VSD

 先天性心疾患のなかでもっとも頻度の多い疾患で、その中でも約80% を占める膜様部欠損や、筋性部欠損では自然閉鎖や縮小の可能性もあるので、内科的管理を第一に考える。その中でも、肺高血圧を合併している症例や、心不全や呼吸不全の強い症例は乳児期に手術を行う必要がある。特にDown症候群に合併したVSDでは、早期に不可逆性の肺血管病変を合併する危険があるので、3~6ヶ月以内に手術を行う。

 乳児期以降まで待機できた患者でも、肺血流量が多い場合には手術適応となる。一般に、肺体血流比が2.0以上では手術を勧めることになる。肺体血流比が1.5以下では手術の適応は無いが、肺体血流比が1.5と2.0の間では、呼吸器感染が頻回であったり、発育が遅れたり、他の社会的要因で手術適応となる場合がある。IEに注意が必要。

Adults with small restrictive VSDs who are asymptomatic often require no surgical intervention and should receive endocarditis prophylaxis as necessary. In general, IF THE QP:QS IS GREATER THAN 1.5:1 AND THE CALCULATED PULMONARY VASCULAR RESISTANCE IS UNDER 6 UNITS/M2, SURGICAL CLOSURE OF A VSD CAN BE PERFORMED SAFELY AND IS RECOMMENDED. The development of a double-chambered right ventricle with outflow obstruction is also an indication for operative intervention. The occurrence of infective endocarditis in an adult with a restrictive VSD is a rare but compelling indication for repair of the defect. In adults with VSD and Eisenmenger's syndrome, heart-lung transplantation or lung transplantation with closure of the defect may be considered.

2009年1月5日月曜日

Aortic valve replacement in patients aged 50 to 70 years: improved outcome with mechanical versus biologic prostheses.

Aortic valve replacement in patients aged 50 to 70 years: improved outcome with mechanical versus biologic prostheses.

Brown ML, Schaff HV, Lahr BD, Mullany CJ, Sundt TM, Dearani JA, McGregor CG, Orszulak TA.

J Thorac Cardiovasc Surg. 2008 Apr;135(4):878-84; discussion 884. Epub 2008 Mar 4.


Mayo クリニックからの論文。最近の流れでは、AVRで生体弁のほうがいいと言う意見が多いものの、今回はこの流れに逆行し、機械弁のほうが良いとしている。選 択は外科医の好み。レトロスペクティブ。年齢、性別、CABG、弁のサイズのみマッチさせている。死亡率に、大きな差が認められている。ランドマイズドト ライアルの必要性を唱えている。

疑問;1、周術期死亡率が生体弁で5.5%(機械弁1.8%)というのは、かなり多すぎる。これを考慮しても、生存曲線の傾きは生体弁のほうがきつい。2、ランダマイズではないので、バイアスの関与は否定できない。3、マッチの方法が中途半端。


Comment in:
J Thorac Cardiovasc Surg. 2008 Oct;136(4):1101-2; author reply 1102.
やはりバイアスの存在を指摘している。返答は大きなバイアスはない。