2009年8月27日木曜日

座長の心得

研究会の座長をしたので、反省を込めて心得をメモ。


二人座長だったので、相手の座長とのコミュニケーションが難しい。
どちらが進行するか、どのタイミングで話すかなど。

質問の見落とし
会場が広かったため、意外なタイミングで手を挙げられると、見落とすことがある。

論議が白熱したときの終わらせ方

質問のない演題に対する対応

2009年8月26日水曜日

CYP2C19


薬物代謝を行う重要な酵素にチトクロームP450(CYP)がある。 CYP の分子種の酵素活
性は各個人により大きく異なっている。
CYP2C19 は、日本人を含む黄色人種の約20%はpoor metabolizer(CYP2C19が少ない) で、白人は5%以下である。CYP2C19で代謝される薬物(ジアゼパム、イミプラニン、PPI)の血中濃度が上昇し、副作用に注意が必要。チクロピジンによる肝障害(胆汁うっ滞型)は白人よりも日本人で多いことが知られている。

クロピドグレルは、CYP2C19によって活性代謝物となり、血小板の凝集を抑制する。日本人では抗血小板効果が悪い人が多い。
PPIを併用するとCYP2C19が阻害されて、さらに抗血小板効果が悪くなる。

2009年8月25日火曜日

論文の書き方 3


設計図をもとに英作文
主文一つに付き1パラグラフを作成。主文はパラグラフの最初か最後。

アブストラクトは最後に書く。
多くの編集者。レビューワーはアブストラクトだけでアクセプトするか決めている。第一印象が重要。抄録だけで完結するように。抄録の結論も抄録のデータから引き出されたものになっているか?
時制
最近は全て現在形を使うことも多い。
背景、問題点などは、古いものは過去形、過去完了形。
結果は過去形。結論過去形か現在形。
Weは多くても2箇所。


フォーマットを整える。
雑誌の形式に従う。「プロの仕事」と思わせる。フォント種類、サイズの不一致がないか?表や図は一ページに収めて見やすくする。雑誌に合わせて英国式、米国式のスペルチェックを忘れずに。

引用文献
End Noteを使用。使い方はこの本↑に書かれている。
よく吟味する。重要でかつ、最新のものを選ぶ。
その分野で重要な論文を入れること。
レビューワーになりそうな人の論文を引用する。

図表は文章に勝る。
図は表に勝る。表は文章に勝る。

2009年8月24日月曜日

医学論文の書き方2



論文設計図の作成

日本語で論理を組み立てる。
背景から結論まで、各段落の主文を作り、論理構成を理解するためにフローチャートにする。

背景 シンプルに!短く、鋭く。1ページに収まるように。最後(アブストラクトの前)に回しても良い。
ロート型: 広く→狭く。 
目的、仮説、exposureとoutcomeの区別をしっかりおさえる。
第1段落(5行まで):一般論
対象となる疾患について(1行、引用文献1-2編)、その疾患の臨床的な意義について(2行、引用文献3-5編)、これまでの研究でまだ解明されていない点について(1行、引用文献3-5編)
第2段落:問題点と対処法(解決法の引用と未解決の問題)
これまでの研究のレビュー(何がわかっていて何がわかっていないのか?新しい研究が望まれている理由は?これまでの研究の欠点は?)
ここでこれまでの研究の文脈の中でこれから書く論文の位置付けを行う。
第3段落:目的
この論文の目的を一行で書く。

という流れだが、実際に考える時は、後(第3段落:目的)から考えていく。

方法と結果
それぞれを対応させる。patientsにはpatients characteristicsが対応。

Discussion
結果のまとめ→従来の報告→その差異→その理由付け→結果から予想される将来への展望→limitations(謙遜は不要。nenetheless,と付加価値があることを主張する。ポジティブに終える)
6つの"C"
第1段落:"Clarify" この論文の結果で一番大切なことをまとめる。
第2段落:"Compare and contrast"この論文の結果は他の研究、これまでの仮説とあっているか?
もしあっていれば"Our study further supports existing data showing...."
もしあっていなければ"Our study now shows that ..."そして予想外の結果について考えられる理由を挙げて考察を加える。
第3段落:"Contemplate"
結果について説明を加える。基礎研究に立ち返る。生理学的見地から?解剖学的見地から?病理学的見地から?薬学的見地から?
第4段落:"Contribution"
臨床的意義、研究としての意義 治療に対する貢献 今後の研究に対する展望
あまり一般化しすぎない。この研究ですべてが解決することはない。
第5段落:"Cons"
研究のデザインの問題?
研究の対象者の問題?
データ収集の問題?
第6段落:"Conclusion"


くれぐれも論理の破綻のないように。

2009年8月16日日曜日

抗凝固・抗血小板療法


抗凝固・抗血小板療法

医学のあゆみ 2009. 228. 10


概念的に
血流うっ滞:凝固→抗凝固
動脈出血:血小板→抗血小板
ということになる。

アスピリン
最もエビデンスの多い薬品。
一次予防:エビデンスあり。性差あり(男:心、女:脳)。効果は強くない。死亡率では差はなし。高齢では消化管出血に注意。
二次予防:動脈硬化抑制エビデンスあり。
アスピリン抵抗性あり。定義自体はっきりしていない。

その他の抗血小板療法
エビデンスが少ない。
クロピドグレル(プラビックス)はチクロピリジン(パナルジン)の半分の副作用。有用。

抵抗性問題 ワーファリン、クロピドグレル
肝での活性型への代謝: チトクロームP450であるCYP2C19が関係。PPIも関与する。
CYP2C19の遺伝子多型がある。人によって効き目が違う。
(飲酒の酔いが人によって違う)

イコサペンタン酸は有望かもしれない。

2009年8月14日金曜日

医学論文の書き方 1 書き始め

書き始め

何よりモチベーションを明確に
この先のハードルは高い。上司に書けと言われたから仕方なしに書く。というのでは、低くない壁にぶち当たった時に挫折してしまう。なぜこの論文を書くのかをはっきりさせておくのは非常に大切。

関連論文の熟読
関連の論文数編を徹底的に読み込む。これから書く論文のテーマの背景、まだわかっていないことについて精通する。少なくともレビューワーと同程度の知識を持つこと。
この課程で自分の論文に使えそうな表現にアンダーラインを引いておく。

2009年8月12日水曜日

本当はやさしい臨床統計

こういう本を読むたびに、作者が血のにじむ思いをして得たすごい知識が、たった3000円弱で入手できることのすごさ、安易さに驚きます。

統計学の解説本は小難しいものが多くて閉口ですが、これは全然違います。統計をあまり理解していない臨床医の疑問に対して一歩ずつ、図や語呂合わせを多用しながら進められる解説は非常に解りやすいです。実際の論文を手本に、定石を解説していきます。論文の見方や視点がかわります。
第1章:論文の統計解析法を分析、解説。
第2章:統計解析手法を説明。やや難解。辞書的に活用すべきか。
第3章:臨床で統計の知識をどのように生かすべきか。と言った解説。ここから読むといいのかも。

2009年8月11日火曜日

PCI vs CABG

Coronary artery bypass surgery compared with percutaneous coronary interventions for multivessel disease: a collaborative analysis of individual patient data from ten randomised trials.
Lancet. 2009 Apr 4;373(9670):1190-7.

多枝病変に対する10のランドマイズド試験のデータにて比較。PCIはPTCAのみ(6)とBMS(4)とがある。エンドポイントは死亡。

結論は、65歳以上の高齢者とDM合併症例ではCABGのほうが安全で、55歳以下の若年者はPCIの方が良い。それ以外は引き分け。

患者の意向によって治療の選択を決めるのが良い。


日本の試験 CREDO-kyoto(DESvsCABG)では75歳以上についてのみ、CABGが優位。


問題は、よく言われているように、ランドマイズド試験自体が、エントリー症例のうち非常に病変の軽い(PCIができる程度の)約1割しか、対象にできないため、real worldを反映しないということ。
またBMSの時代は終わり、今はDESが中心であり、その結果が注目される。
しかし現段階では(SYNTAXなど)、DESは、再狭窄率は少ないがlate thrombosisがあり、成績はほとんど変わらないため、おそらく比較試験でも差は出ないであろう。

成績がほとんど変わらない以上、real worldに応じて、医師の勧め、患者の意向で決めるのが良いと思う。
ただしgate keeperがInterventionistか、それ以外のCardiologistかは大きな問題である。

2009年8月7日金曜日

脳合併症のあるIE症例の手術時期

エドワーズ バルブ2009 川添先生


かの有名な江石論文:J Thorac Cardiovasc Surg. 1995 Dec;110(6):1745-55.Surgical management of infective endocarditis associated with cerebral complications. Multi-center retrospective study in Japan.では脳塞栓発症後2-4週間空けるべきとしているため、本邦では、これに従うことが多かった。

しかし最近これが見直される傾向にある。

心不全などで待てないときは72時間以内の超急性期でも手術可能。
ラットの実験で、脳梗塞後72時間で脳血液関門が破綻し、その後梗塞性出血を起こしやすいとされている。

無症候性、発症時期不明の脳梗塞については症例に応じて考える。
Black dot (MRI T2)のある場合は注意が必要


IEに伴う塞栓症のうち約2/3は脳神経系
特にブドウ球菌、カンジダ感染、敗血症症例に多い。

2009年8月6日木曜日

CABGの静脈採取法の比較 内視鏡VS直視下

Endoscopic versus Open Vein-Graft Harvesting in Coronary-Artery Bypass Surgery
N Engl J Med 2009;361:235-44.

CABGの静脈採取を内視鏡を使用した方法と直視下に切開して採る通常の方法を比較したものです。

もともとこのStudyはE2F転写デコイーという遺伝子治療を目的にデザインされたものです。
この治療により静脈内膜の過形成を予防し、静脈グラフトの開存性を改善しようという目的でしたが、これが全く効果なく、Studyは失敗に終わったのですが、ここで諦めなかったのはすごい。せっかくこれだけデータを集めて、何かできないか?この治療で差がなかったのは幸いとばかりに、全く違うStudyに変化させ、NEJMに掲載されました。この姿勢はすばらしいと思います。

内視鏡静脈採取法は、米国では約70%がこの方法で採取されるようです。私も一時期、やったことがありますが、日本人女性などで、非常に薄い静脈の場合は、剥離の際に静脈を損傷してしまうことが多かったと思います。また静脈自体の取り扱いが雑になる傾向があります。しかしこれは、複数の小切開でストリッパーを用いて直視下に採取する方法と、ほとんど変わらないような気がします。この方法でも大きな問題はない印象でした。

結論的には、内視鏡法の方が成績が悪い、ということです。グラフトの閉塞率、患者の生命予後、合併症率が統計学的に有意に高率になっています。

この論文の最大の問題点は、1-1.5年のフォローで、静脈グラフト閉塞/狭窄率は、内視鏡法46.7%、直視下38.0%とめちゃくちゃ悪いことです。一般に言われているのに比べて数倍高いです。生命予後に関しても同様です。

前向きランダマイズド試験をやる施設が殺到しそうですね。

2009年8月5日水曜日

僧帽弁手術における視野展開

僧帽弁手術における視野展開

柴田先生(関西労災病院)SJM DVD
Bolling M.D. エドワーズ CD(再生ソフト内臓、PC専用)

僧帽弁手術のポイント
Exposure! Exposure! Exposure!


SVC,IVCを十分剥離、受動する。その後、心房間を剥離する。
SVCの剥離は右PA、LA天井も十分露出し、SVCカニュレーションは、視野が悪いときにSVCを離断できるように、できるだけ頭側。

鈎のかけ方は、2または3本使用。
中隔側を1、2本。深くかけ過ぎない。場合によっては幅の狭いものを使用する。
下方を1本(エステックの場合、大動脈弁用)

2009年8月4日火曜日

ITAとOPCAB

第59回 日本胸部外科学会 ランチョンセミナー9
ITAとOPCAB 樋上先生
エチコンDVD

狭窄が甘い時、ITAはフローの競合にて閉塞することはないが、SVG、GEAは閉塞することがある。ITAでもY compositeは閉塞することがあり、sequantialは閉塞しにくい。

ITA中枢側の剥離がポイント
外側の枝をすべて処理すると、内側にある横隔神経とともに、さらに内側に受動される。

グラフトデザイン
基本 RITA-D-LAD, LITA-Cx 75%可能
代替 LITA-D-LAD, RITA-(LITAあまり-)Cx
→これは驚き。昨日の岡林先生と逆。

Key graftを最後に吻合する
 一瞬の虚血でも事故になりうるので、安全なところからする。
 →これも驚き。

グラフトの長さの決め方
 PA基部左側縁を経由点にする。

2009年8月3日月曜日

OPCABとPAS port system

第37回 日本心臓血管外科学会 ランチョンセミナー4
OPCABとPAS port system 岡林先生
センチュリーDVD

OPCABであっても術後管理はウエットに行う。(体重4kg増ってこともありらしい)
術後脳梗塞予防になるそうだ。ヘパリン使用もいい。

両側内胸動脈のコンポジットはLMTをつくるようなものだから、術前の評価が必要。
鎖骨下動脈起始部、IMA起始部を見ておく。
→うちは評価しているのでスタディになるかも。

両側内胸動脈使用により、CABGredoはなくなるが、AVRredoはあり得る。
RITAを前面に通すことはリスクになるのでtransvers sinusを通してAorta, PA後を通す。
こうすれば、redoになっても、剥離は簡単で、RITAはクランプとAortomyの間にあるので問題なし。

PAS portの後出血は、グラフトを受動して確認する。Woozingは止まる。追加針は簡単。とのこと。
→追加針は難しかったような気がする。ストラットで糸が切れる。

2009年8月2日日曜日

MICS

今まで手術をすることに興味があって、患者にやさしいとされている低侵襲手術に興味はなかった。何より低侵襲の定義自体に疑問があったので真剣に考えてこなかったが、今回、勉強してちょっと意識が変わってきた。
何より美容的にインパクトが高いことで、これによりアピールが高くなると思われる。

今ある道具、技術を使用して、やや大きめ7-10cmの傷でする方法と、MICS専用の機材を使用して(例えばロボット、持針機、糸結び機など)する方法がある。
当然、実行可能性の高いのは前者。

安全マージンが少なくなるので、一つ一つの手技を確実にこなしていくことが大切。
特に体外循環の確立がポイント。送血を入れるときが最もストレスが高い。アメリカにはメスの内臓された送血管があるらしい。FV脱血は、僧帽弁の展開などで悪くなることが多い。頚静脈脱血もする必要がある。アメリカにはFV脱血一本でできるように先端に屈曲防止用のワイヤーが入った脱血管があるらしい。