2009年9月29日火曜日

人生の物語を変えるために:精神分析入門  北山 修


特別講演1、
人生の物語を変えるために:精神分析入門  北山 修
(九州大学人間環境学研究院人間科学部門臨床心理学)



日本の精神学者の課題は、日本の自殺者をいかに減らすかということだそうだ。
なぜ日本で自殺者が多いのかというと、去ることにより潔さ、美しさを残すためらしい。
そのヒントが、古事記のイザナギとイザナミの話と鶴の恩返し(どちらも良く似た話)にある。

見てはいけないと言われても見てしまう → 日本人の男は約束を守らない。
見られた方(被害者・女性)の方が去っていく → 日本人の男は責任を取らない。
見られて心に傷を負った者が去る(消える) → 日本人は自殺する割合が高い。

汚いものは、患者の心理、過去の不幸な出来事のことであり、精神科医の前でそれをさらけ出す。精神科医が去っていかなければ、患者は自殺しなくていい。

ということで、精神科治療において、神話が大きな役割を果たし(誰もが無意識のうちに物語を身につけており)、これを精神科医は書き換えることができる場面に遭遇している。


これを書いていて思ったのだが、
かつて村上春樹が、物語の必要性を書いたエッセイがあった。

誰もが物語を必要とするのは、なんとなく解る気がする。
例えば、私は小説をよく読むので、現実にあえて物語(ファンタジー)の必要性を感じない。用意された物語に興味がない。しかし一方で、ディズニーランドなど、現実世界のファンタジーにすごく引き付けられている人も多くいる。現実を忘れられるという感想を持つ人が多い。

このことと、今回の講演の内容がどう関連するのか整理がつかないが思ったことをだらだら書いてみました。

2009年9月28日月曜日

胸部大動脈瘤の治療



日本外科学会雑誌2009年第5号
特集:胸部大動脈瘤の治療

気になったものをピックアップしてみました。


下行大動脈瘤
III型慢性解離症例では弓部を遮断したい誘惑に駆られるが、解離症例では遮断による術中解離の危険がある。症例報告もある。



大動脈解離

送血部位

EntryとReentryの位置関係から、大腿動脈送血では偽腔が膨隆し重要臓器への真腔血流が不足する症例が経験され、腋窩動脈送血が重要視されるようになった。
*****
CT上大腿動脈送血だけでいけると判断しても、直腸温の下がりが悪いなどMalperfusionが疑われた場合はすみやかに腋窩動脈送血を追加すべきである。

上行置換か弓部置換か
基本的にEntryの位置によって決定されるが、弓部置換の手術成績は改善しているとは言っても上行置換より死亡率は高く、手術時間は長い。急性期の手術成績を良好に保ちつつ遠隔成績の改善をめざす努力が必要。

ステントグラフト
真腔狭窄をきたしている部分にbare stentのみを挿入することがあるが、あくまでEntryを閉鎖した状態で行うことが重要で、Entry閉鎖なく、bare stentを挿入すると、真腔狭窄部が移動する結果となり、かえって治療が行いずらくなることもある。

挿入ワイヤーは上腕動脈から挿入した4Frカテーテルでカバーし、ワイヤーが直接内膜にあたり、損傷しないように工夫している。

Maloperfusion症例の場合は、ワイヤーを抜去せず、圧測定ならびに大動脈造影を施行する。

2009年9月18日金曜日

情熱大陸 :ミャンマーで無償医療をしている小児外科医


情熱大陸 :ミャンマーで無償医療をしている小児外科医


http://www.mbs.jp/jounetsu/2009/07_26.shtml


小児外科医・吉岡秀人44歳
少し前の放送なのだが、HDに録画してあったのを見た。

ミャンマーで無償で子供たちの治療を行っている。プロ集団的な医療チームを鍛え上げながら、作り上げている。よく周囲も付いていける物だ。すごいリーダーシップとともに、かなりの暴君度。こうでないとやっていけないのだろう。
あと経済的な裏づけが、日本で小児科医として働いている奥様というところも興味深い。

慈恵医大の大木先生は、日本人を治療して感じる喜びを語っておられたが、それと正反対。モチベーションが保てるのかが不思議。

2009年9月15日火曜日

三尖弁手術





Kay, deVega法から、フレキシブル・リングの時代に移り、今はリジッド・リングが主流。

MC3は、やはり良さそう。(当院でも導入しよう。)

TVRの成績
一般的に不良とされているが、実際の臨床の現場では、内科的治療を粘った末(肝機能低下を来たしてから)、他の治療法がなく仕方なく、TVRをした結果、不良となった症例が多く含まれている。実際、経験ではTAPとの差はほとんどないような気がする。

ビーティングでするとき
一番最初、あまり心臓が動き出していないときに、中前尖間のコミッシャーから糸掛けをする。ここが一番見難い。一方で弁輪などはビーティングでしたほうが良くわかるときもある。

ポイントはリングの種類よりサイズではないか?という意見もあった。サイズの決め方は決まったものはなさそう。

2009年9月14日月曜日

「死ぬときに後悔すること」 ~こんなに誠実な医療者は見たことがありません。


死ぬときに後悔すること25




アマゾンでベストセラーになっていたので、読んで見ました。

良心的な内容で誠実な著者であることが、すぐに感じられました。
医療の現場は、恋愛(この本の中に例えで出てきました)と同じで、奇麗事だけでは成り立ちません。
今までいろんな医療者の本を読んだことがありますが、なんか余所行きの感じがして、これは俺の知っているものとは違う。という思いが離れませんでした。
この本の中には、現実があります。そしてそれに向き合っている著者の姿、無力さが淡々と描かれています。そして最後に小さなドラマが書かれています。こういったお涙頂戴の話のオンパレードではないところが最高です。こうした姿勢が、この最後のドラマのリアリティにさらなる深みを持たせていると思います。

2009年9月13日日曜日

医療安全の講義



http://www.med.nagoya-u.ac.jp/anzen/


名古屋大学 心臓血管外科 上田裕一 先生による医療安全の講義を聴いてきました。
この方のまじめな人柄とか、真摯な態度など、講義の中に様々な形で現れていて、ほんとに頭が下がりました。
講義の内容は、最新の事柄が網羅されていてすばらしいです。
時間の制約のため、途中はかなり端折られていましたが、十分過ぎる内容でした。
あの講義のすばらしさを、どれだけの方が理解されているのか。

医療事故は、善意の医療者が不完全なシステムによって引き起こされる。というのには、まさに目から鱗です。
これって現在の官僚制度も同じなのではないかなと思いつきました。善意の公務員たちが集まって、知らないうちに機能不全に落ちていって、こんなことになっていった。よくマスコミが、悪意の高級官僚たちが起こした罪悪のように言ってますが、同じことが起こっているのかもしれません。あくまで善意の人々が起こしてしまう重大な出来事なんですね。

不完全なシステム改善の方法は、アメリカ式の物量作戦は失敗に終わり、ゲリラ作戦的な反復声掛け法が良いというのにも、納得させられました。
チーズ理論、最後の砦はナースなど、ほんとに興味深く聞かせていただけました。ありがとうございました。

2009年9月11日金曜日

Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2009年 9/17号


Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2009年 9/17号

雑誌は、あまり買わないのだが、時間があって本屋に立ち寄り、3冊ほど衝動買いしてしまった。
これは、その内の1冊。

あの人のノートが見たい。

中村俊輔の、目標を、短期、中期、長期に分けて書きだし、それに必要なことを書き出しているのは、何かの本で読んだことがあり、有効かもしれないと思った。

あとグライシンガーの詳細なデータがすごい。1球1球、詳細に書かれていて、すばらしい。しかし何より大事なのは、いい球を投げることと言っているのも興味深い。

近いうちに自分の目標を改めて設定してみようと思う。

2009年9月10日木曜日

久しぶりの研究会発表と反省点



研究会参加

久しぶりに研究会発表をしたので、反省点のメモ。


聴衆のレベルに合わせた発表
特別講師の先生の講義は、かなり専門性が高く、レベルも高度であり、客席の反応は良くなかった。
自分の発表の中に同様のことがないか、反省すべし。

言葉と言葉の間に、つい「ええ、・・・」と言ってしまう。聞き辛い。

予定調和
内輪の会のため、表だった批判などを避け、その中でも良い点を見つけて賞賛する傾向にある会であったが、今回、忌憚のない発言があり驚いた。
せっかくの勉強会なので、こういうのもいいかもしれないが、一方で、十分注意が必要と感じた。

最近、症例が減っており、こういった機会に、いろんなコネクションを作り、信頼感を勝ち得る努力をすることが重要である。

2009年9月3日木曜日

PCI vs Medication for stable angina




Effect of PCI on quality of life in patients with stable coronary disease.
N Engl J Med. 2008 Aug 14;359(7):677-87

courage trial(Optimal medical therapy with or without PCI for stable coronary disease. N Engl J Med 2007; 356: 1503-16. ) の続報です。
courage trialでは
安定狭心症に対して、PCI (POBA only or BMS or DES少数)と薬物療法のみの4.6年の比較で、死亡、心筋梗塞など主要イベントに差がなかった
ということでした。そこでQOLならどうだ?ということなのでしょう。

結論は3年以内ならQOLを改善しているが、3年でその差はなくなるということでした。


一般的に言われていることですが、
クリニカルトライアルでは"efficacy"を評価する(理想的な環境で治療を比較する)のであって、実際の臨床現場での"effectiveness"を評価しているのではない。
と言うことですね。

対象が35000人の中から3000人がどうやって選ばれたのか。服薬コンプライアンスや、フォローが3割程度しか完遂できていないことなどが問題点になると思います。

あと蛇足ですが、日本のインターベンショニストの方々は、よく日本の方がテクニックが優れているので、日本で同様の試験をすれば差が出る。と仰いますが、日本の成績を出してから言ってほしいものです。