2009年12月30日水曜日

Bicuspid aortic valve

Management of the aorta in bicuspid aortic valve disease

R. Morton Bolman, III, M. D.
(Brigham and Women's Hospital, USA)

日本心臓血管外科2009 招請講演5
bicuspid aortic valve

一般的に言われているように、病理学的に大動脈が弱い。
大動脈の拡大しやすい。解離が起こりやすい。特に若い人。遺伝性あり。
肺動脈もおかしいので、Rossには不向き。

手術適応
大動脈径5cm以上
4.5cm以上で、拡大傾向、縮窄症、解離や破裂の徴候、CODP、ヘビースモーカー、小さい体格
4.0cm以上で、AVR

マルファン症例に準じている

2009年12月28日月曜日

低侵襲PVIについて  Ralph J. Damiano, Jr., M. D.

Surgery for atrial fibrillation:Finding our way out of the Maze

Ralph J. Damiano, Jr., M. D.
(Washington University in St. Louis, USA)

2009年心臓血管外科学会 招請講演


低侵襲PVIについて

位置づけとしては、カテーテルアブレーションとメイズとの間くらい。侵襲も治癒率も。
AFの中でも、治りやすいやつがあるので、そういう症例を対象にするのが良いかもしれない。

例えば、
persistantではなくparoximal
LAD径は小さいもの
AF期間の短いもの

あと、これの適応症例を見極めるのに、PV起源のAF症例をどうやって診断するかというのがあるが、
これについては、CTと多電極による体外式マッピングの組み合わせでできるようだ。

PV以外の起源のものが3分の1あって、女性に多いというのは、初耳だった。


診断がある程度、確立できれば有望であるが、現時点では、メイズ自体、他手術の補助的な手術なので、それ自体がメインの手術である低侵襲PVIの適応症例は限られていると思う。

2009年12月2日水曜日

虚血性僧房弁逆流:外科治療の適応


虚血性僧房弁逆流



Circulation 9月29日号、Clinician Update「Surgical Management of Ischemic Mitral Regurgitation」
日本心臓病学会誌Vol.4 No.2 2009 J Cardiol Jpn Ed P130~162 「私はこう考える 『虚血性僧房弁逆流:外科治療の適応は?』」

■虚血性僧房弁逆流は僧房弁に器質的病変が無く、僧房弁を支える弁下組織、特に乳頭筋と左室の異常が関与しそれらの原因が虚血によるものと定義づけられる。
■虚血性僧房弁逆流は虚血の治療だけでなく僧房弁逆流を来たした左室の治療が必要であり、その診断には、その原因としての左室機能低下に対する診断を常に含まなければならない。
■虚血性心疾患では、軽度の僧房弁逆流でも予後が悪いことを常に留意すべきである。
■虚血性僧房弁逆流は「弁膜症」の表現形を持った「心室疾患(心筋疾患)」であるため、基本的に心不全になりやすく、自然予後も悪い。
■キーポイントは前尖・後尖を含めたテント化の評価と克服といえる。


手術適応は、ガイドライン上、手術推奨IIbとなっており、かなり限られた症例のみということになっているが、上記のように逆流が軽度であっても長期予後に与える影響は大きく、CABGなどの手術の際には、併施すべきであろう。
アンダーサイズアニュロプラスティだけで、いける症例もある。
虚血性僧房弁逆流はダイナミックな疾患であり、運動負荷、薬物などによって大きな影響を与えるので、評価は厳しくすべき。既往のなかで最も悪かった時を基準とする。
Dd 65 Ds 50以上はリモデリングが進行しやすいので、手術適応としても良いかもしれない。
スワンガンツで、v波の大きさが大きいものは、左房が硬くなっている証拠であるので、手術すべき所見。

2009年9月29日火曜日

人生の物語を変えるために:精神分析入門  北山 修


特別講演1、
人生の物語を変えるために:精神分析入門  北山 修
(九州大学人間環境学研究院人間科学部門臨床心理学)



日本の精神学者の課題は、日本の自殺者をいかに減らすかということだそうだ。
なぜ日本で自殺者が多いのかというと、去ることにより潔さ、美しさを残すためらしい。
そのヒントが、古事記のイザナギとイザナミの話と鶴の恩返し(どちらも良く似た話)にある。

見てはいけないと言われても見てしまう → 日本人の男は約束を守らない。
見られた方(被害者・女性)の方が去っていく → 日本人の男は責任を取らない。
見られて心に傷を負った者が去る(消える) → 日本人は自殺する割合が高い。

汚いものは、患者の心理、過去の不幸な出来事のことであり、精神科医の前でそれをさらけ出す。精神科医が去っていかなければ、患者は自殺しなくていい。

ということで、精神科治療において、神話が大きな役割を果たし(誰もが無意識のうちに物語を身につけており)、これを精神科医は書き換えることができる場面に遭遇している。


これを書いていて思ったのだが、
かつて村上春樹が、物語の必要性を書いたエッセイがあった。

誰もが物語を必要とするのは、なんとなく解る気がする。
例えば、私は小説をよく読むので、現実にあえて物語(ファンタジー)の必要性を感じない。用意された物語に興味がない。しかし一方で、ディズニーランドなど、現実世界のファンタジーにすごく引き付けられている人も多くいる。現実を忘れられるという感想を持つ人が多い。

このことと、今回の講演の内容がどう関連するのか整理がつかないが思ったことをだらだら書いてみました。

2009年9月28日月曜日

胸部大動脈瘤の治療



日本外科学会雑誌2009年第5号
特集:胸部大動脈瘤の治療

気になったものをピックアップしてみました。


下行大動脈瘤
III型慢性解離症例では弓部を遮断したい誘惑に駆られるが、解離症例では遮断による術中解離の危険がある。症例報告もある。



大動脈解離

送血部位

EntryとReentryの位置関係から、大腿動脈送血では偽腔が膨隆し重要臓器への真腔血流が不足する症例が経験され、腋窩動脈送血が重要視されるようになった。
*****
CT上大腿動脈送血だけでいけると判断しても、直腸温の下がりが悪いなどMalperfusionが疑われた場合はすみやかに腋窩動脈送血を追加すべきである。

上行置換か弓部置換か
基本的にEntryの位置によって決定されるが、弓部置換の手術成績は改善しているとは言っても上行置換より死亡率は高く、手術時間は長い。急性期の手術成績を良好に保ちつつ遠隔成績の改善をめざす努力が必要。

ステントグラフト
真腔狭窄をきたしている部分にbare stentのみを挿入することがあるが、あくまでEntryを閉鎖した状態で行うことが重要で、Entry閉鎖なく、bare stentを挿入すると、真腔狭窄部が移動する結果となり、かえって治療が行いずらくなることもある。

挿入ワイヤーは上腕動脈から挿入した4Frカテーテルでカバーし、ワイヤーが直接内膜にあたり、損傷しないように工夫している。

Maloperfusion症例の場合は、ワイヤーを抜去せず、圧測定ならびに大動脈造影を施行する。

2009年9月18日金曜日

情熱大陸 :ミャンマーで無償医療をしている小児外科医


情熱大陸 :ミャンマーで無償医療をしている小児外科医


http://www.mbs.jp/jounetsu/2009/07_26.shtml


小児外科医・吉岡秀人44歳
少し前の放送なのだが、HDに録画してあったのを見た。

ミャンマーで無償で子供たちの治療を行っている。プロ集団的な医療チームを鍛え上げながら、作り上げている。よく周囲も付いていける物だ。すごいリーダーシップとともに、かなりの暴君度。こうでないとやっていけないのだろう。
あと経済的な裏づけが、日本で小児科医として働いている奥様というところも興味深い。

慈恵医大の大木先生は、日本人を治療して感じる喜びを語っておられたが、それと正反対。モチベーションが保てるのかが不思議。

2009年9月15日火曜日

三尖弁手術





Kay, deVega法から、フレキシブル・リングの時代に移り、今はリジッド・リングが主流。

MC3は、やはり良さそう。(当院でも導入しよう。)

TVRの成績
一般的に不良とされているが、実際の臨床の現場では、内科的治療を粘った末(肝機能低下を来たしてから)、他の治療法がなく仕方なく、TVRをした結果、不良となった症例が多く含まれている。実際、経験ではTAPとの差はほとんどないような気がする。

ビーティングでするとき
一番最初、あまり心臓が動き出していないときに、中前尖間のコミッシャーから糸掛けをする。ここが一番見難い。一方で弁輪などはビーティングでしたほうが良くわかるときもある。

ポイントはリングの種類よりサイズではないか?という意見もあった。サイズの決め方は決まったものはなさそう。

2009年9月14日月曜日

「死ぬときに後悔すること」 ~こんなに誠実な医療者は見たことがありません。


死ぬときに後悔すること25




アマゾンでベストセラーになっていたので、読んで見ました。

良心的な内容で誠実な著者であることが、すぐに感じられました。
医療の現場は、恋愛(この本の中に例えで出てきました)と同じで、奇麗事だけでは成り立ちません。
今までいろんな医療者の本を読んだことがありますが、なんか余所行きの感じがして、これは俺の知っているものとは違う。という思いが離れませんでした。
この本の中には、現実があります。そしてそれに向き合っている著者の姿、無力さが淡々と描かれています。そして最後に小さなドラマが書かれています。こういったお涙頂戴の話のオンパレードではないところが最高です。こうした姿勢が、この最後のドラマのリアリティにさらなる深みを持たせていると思います。

2009年9月13日日曜日

医療安全の講義



http://www.med.nagoya-u.ac.jp/anzen/


名古屋大学 心臓血管外科 上田裕一 先生による医療安全の講義を聴いてきました。
この方のまじめな人柄とか、真摯な態度など、講義の中に様々な形で現れていて、ほんとに頭が下がりました。
講義の内容は、最新の事柄が網羅されていてすばらしいです。
時間の制約のため、途中はかなり端折られていましたが、十分過ぎる内容でした。
あの講義のすばらしさを、どれだけの方が理解されているのか。

医療事故は、善意の医療者が不完全なシステムによって引き起こされる。というのには、まさに目から鱗です。
これって現在の官僚制度も同じなのではないかなと思いつきました。善意の公務員たちが集まって、知らないうちに機能不全に落ちていって、こんなことになっていった。よくマスコミが、悪意の高級官僚たちが起こした罪悪のように言ってますが、同じことが起こっているのかもしれません。あくまで善意の人々が起こしてしまう重大な出来事なんですね。

不完全なシステム改善の方法は、アメリカ式の物量作戦は失敗に終わり、ゲリラ作戦的な反復声掛け法が良いというのにも、納得させられました。
チーズ理論、最後の砦はナースなど、ほんとに興味深く聞かせていただけました。ありがとうございました。

2009年9月11日金曜日

Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2009年 9/17号


Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2009年 9/17号

雑誌は、あまり買わないのだが、時間があって本屋に立ち寄り、3冊ほど衝動買いしてしまった。
これは、その内の1冊。

あの人のノートが見たい。

中村俊輔の、目標を、短期、中期、長期に分けて書きだし、それに必要なことを書き出しているのは、何かの本で読んだことがあり、有効かもしれないと思った。

あとグライシンガーの詳細なデータがすごい。1球1球、詳細に書かれていて、すばらしい。しかし何より大事なのは、いい球を投げることと言っているのも興味深い。

近いうちに自分の目標を改めて設定してみようと思う。

2009年9月10日木曜日

久しぶりの研究会発表と反省点



研究会参加

久しぶりに研究会発表をしたので、反省点のメモ。


聴衆のレベルに合わせた発表
特別講師の先生の講義は、かなり専門性が高く、レベルも高度であり、客席の反応は良くなかった。
自分の発表の中に同様のことがないか、反省すべし。

言葉と言葉の間に、つい「ええ、・・・」と言ってしまう。聞き辛い。

予定調和
内輪の会のため、表だった批判などを避け、その中でも良い点を見つけて賞賛する傾向にある会であったが、今回、忌憚のない発言があり驚いた。
せっかくの勉強会なので、こういうのもいいかもしれないが、一方で、十分注意が必要と感じた。

最近、症例が減っており、こういった機会に、いろんなコネクションを作り、信頼感を勝ち得る努力をすることが重要である。

2009年9月3日木曜日

PCI vs Medication for stable angina




Effect of PCI on quality of life in patients with stable coronary disease.
N Engl J Med. 2008 Aug 14;359(7):677-87

courage trial(Optimal medical therapy with or without PCI for stable coronary disease. N Engl J Med 2007; 356: 1503-16. ) の続報です。
courage trialでは
安定狭心症に対して、PCI (POBA only or BMS or DES少数)と薬物療法のみの4.6年の比較で、死亡、心筋梗塞など主要イベントに差がなかった
ということでした。そこでQOLならどうだ?ということなのでしょう。

結論は3年以内ならQOLを改善しているが、3年でその差はなくなるということでした。


一般的に言われていることですが、
クリニカルトライアルでは"efficacy"を評価する(理想的な環境で治療を比較する)のであって、実際の臨床現場での"effectiveness"を評価しているのではない。
と言うことですね。

対象が35000人の中から3000人がどうやって選ばれたのか。服薬コンプライアンスや、フォローが3割程度しか完遂できていないことなどが問題点になると思います。

あと蛇足ですが、日本のインターベンショニストの方々は、よく日本の方がテクニックが優れているので、日本で同様の試験をすれば差が出る。と仰いますが、日本の成績を出してから言ってほしいものです。

2009年8月27日木曜日

座長の心得

研究会の座長をしたので、反省を込めて心得をメモ。


二人座長だったので、相手の座長とのコミュニケーションが難しい。
どちらが進行するか、どのタイミングで話すかなど。

質問の見落とし
会場が広かったため、意外なタイミングで手を挙げられると、見落とすことがある。

論議が白熱したときの終わらせ方

質問のない演題に対する対応

2009年8月26日水曜日

CYP2C19


薬物代謝を行う重要な酵素にチトクロームP450(CYP)がある。 CYP の分子種の酵素活
性は各個人により大きく異なっている。
CYP2C19 は、日本人を含む黄色人種の約20%はpoor metabolizer(CYP2C19が少ない) で、白人は5%以下である。CYP2C19で代謝される薬物(ジアゼパム、イミプラニン、PPI)の血中濃度が上昇し、副作用に注意が必要。チクロピジンによる肝障害(胆汁うっ滞型)は白人よりも日本人で多いことが知られている。

クロピドグレルは、CYP2C19によって活性代謝物となり、血小板の凝集を抑制する。日本人では抗血小板効果が悪い人が多い。
PPIを併用するとCYP2C19が阻害されて、さらに抗血小板効果が悪くなる。

2009年8月25日火曜日

論文の書き方 3


設計図をもとに英作文
主文一つに付き1パラグラフを作成。主文はパラグラフの最初か最後。

アブストラクトは最後に書く。
多くの編集者。レビューワーはアブストラクトだけでアクセプトするか決めている。第一印象が重要。抄録だけで完結するように。抄録の結論も抄録のデータから引き出されたものになっているか?
時制
最近は全て現在形を使うことも多い。
背景、問題点などは、古いものは過去形、過去完了形。
結果は過去形。結論過去形か現在形。
Weは多くても2箇所。


フォーマットを整える。
雑誌の形式に従う。「プロの仕事」と思わせる。フォント種類、サイズの不一致がないか?表や図は一ページに収めて見やすくする。雑誌に合わせて英国式、米国式のスペルチェックを忘れずに。

引用文献
End Noteを使用。使い方はこの本↑に書かれている。
よく吟味する。重要でかつ、最新のものを選ぶ。
その分野で重要な論文を入れること。
レビューワーになりそうな人の論文を引用する。

図表は文章に勝る。
図は表に勝る。表は文章に勝る。

2009年8月24日月曜日

医学論文の書き方2



論文設計図の作成

日本語で論理を組み立てる。
背景から結論まで、各段落の主文を作り、論理構成を理解するためにフローチャートにする。

背景 シンプルに!短く、鋭く。1ページに収まるように。最後(アブストラクトの前)に回しても良い。
ロート型: 広く→狭く。 
目的、仮説、exposureとoutcomeの区別をしっかりおさえる。
第1段落(5行まで):一般論
対象となる疾患について(1行、引用文献1-2編)、その疾患の臨床的な意義について(2行、引用文献3-5編)、これまでの研究でまだ解明されていない点について(1行、引用文献3-5編)
第2段落:問題点と対処法(解決法の引用と未解決の問題)
これまでの研究のレビュー(何がわかっていて何がわかっていないのか?新しい研究が望まれている理由は?これまでの研究の欠点は?)
ここでこれまでの研究の文脈の中でこれから書く論文の位置付けを行う。
第3段落:目的
この論文の目的を一行で書く。

という流れだが、実際に考える時は、後(第3段落:目的)から考えていく。

方法と結果
それぞれを対応させる。patientsにはpatients characteristicsが対応。

Discussion
結果のまとめ→従来の報告→その差異→その理由付け→結果から予想される将来への展望→limitations(謙遜は不要。nenetheless,と付加価値があることを主張する。ポジティブに終える)
6つの"C"
第1段落:"Clarify" この論文の結果で一番大切なことをまとめる。
第2段落:"Compare and contrast"この論文の結果は他の研究、これまでの仮説とあっているか?
もしあっていれば"Our study further supports existing data showing...."
もしあっていなければ"Our study now shows that ..."そして予想外の結果について考えられる理由を挙げて考察を加える。
第3段落:"Contemplate"
結果について説明を加える。基礎研究に立ち返る。生理学的見地から?解剖学的見地から?病理学的見地から?薬学的見地から?
第4段落:"Contribution"
臨床的意義、研究としての意義 治療に対する貢献 今後の研究に対する展望
あまり一般化しすぎない。この研究ですべてが解決することはない。
第5段落:"Cons"
研究のデザインの問題?
研究の対象者の問題?
データ収集の問題?
第6段落:"Conclusion"


くれぐれも論理の破綻のないように。

2009年8月16日日曜日

抗凝固・抗血小板療法


抗凝固・抗血小板療法

医学のあゆみ 2009. 228. 10


概念的に
血流うっ滞:凝固→抗凝固
動脈出血:血小板→抗血小板
ということになる。

アスピリン
最もエビデンスの多い薬品。
一次予防:エビデンスあり。性差あり(男:心、女:脳)。効果は強くない。死亡率では差はなし。高齢では消化管出血に注意。
二次予防:動脈硬化抑制エビデンスあり。
アスピリン抵抗性あり。定義自体はっきりしていない。

その他の抗血小板療法
エビデンスが少ない。
クロピドグレル(プラビックス)はチクロピリジン(パナルジン)の半分の副作用。有用。

抵抗性問題 ワーファリン、クロピドグレル
肝での活性型への代謝: チトクロームP450であるCYP2C19が関係。PPIも関与する。
CYP2C19の遺伝子多型がある。人によって効き目が違う。
(飲酒の酔いが人によって違う)

イコサペンタン酸は有望かもしれない。

2009年8月14日金曜日

医学論文の書き方 1 書き始め

書き始め

何よりモチベーションを明確に
この先のハードルは高い。上司に書けと言われたから仕方なしに書く。というのでは、低くない壁にぶち当たった時に挫折してしまう。なぜこの論文を書くのかをはっきりさせておくのは非常に大切。

関連論文の熟読
関連の論文数編を徹底的に読み込む。これから書く論文のテーマの背景、まだわかっていないことについて精通する。少なくともレビューワーと同程度の知識を持つこと。
この課程で自分の論文に使えそうな表現にアンダーラインを引いておく。

2009年8月12日水曜日

本当はやさしい臨床統計

こういう本を読むたびに、作者が血のにじむ思いをして得たすごい知識が、たった3000円弱で入手できることのすごさ、安易さに驚きます。

統計学の解説本は小難しいものが多くて閉口ですが、これは全然違います。統計をあまり理解していない臨床医の疑問に対して一歩ずつ、図や語呂合わせを多用しながら進められる解説は非常に解りやすいです。実際の論文を手本に、定石を解説していきます。論文の見方や視点がかわります。
第1章:論文の統計解析法を分析、解説。
第2章:統計解析手法を説明。やや難解。辞書的に活用すべきか。
第3章:臨床で統計の知識をどのように生かすべきか。と言った解説。ここから読むといいのかも。

2009年8月11日火曜日

PCI vs CABG

Coronary artery bypass surgery compared with percutaneous coronary interventions for multivessel disease: a collaborative analysis of individual patient data from ten randomised trials.
Lancet. 2009 Apr 4;373(9670):1190-7.

多枝病変に対する10のランドマイズド試験のデータにて比較。PCIはPTCAのみ(6)とBMS(4)とがある。エンドポイントは死亡。

結論は、65歳以上の高齢者とDM合併症例ではCABGのほうが安全で、55歳以下の若年者はPCIの方が良い。それ以外は引き分け。

患者の意向によって治療の選択を決めるのが良い。


日本の試験 CREDO-kyoto(DESvsCABG)では75歳以上についてのみ、CABGが優位。


問題は、よく言われているように、ランドマイズド試験自体が、エントリー症例のうち非常に病変の軽い(PCIができる程度の)約1割しか、対象にできないため、real worldを反映しないということ。
またBMSの時代は終わり、今はDESが中心であり、その結果が注目される。
しかし現段階では(SYNTAXなど)、DESは、再狭窄率は少ないがlate thrombosisがあり、成績はほとんど変わらないため、おそらく比較試験でも差は出ないであろう。

成績がほとんど変わらない以上、real worldに応じて、医師の勧め、患者の意向で決めるのが良いと思う。
ただしgate keeperがInterventionistか、それ以外のCardiologistかは大きな問題である。

2009年8月7日金曜日

脳合併症のあるIE症例の手術時期

エドワーズ バルブ2009 川添先生


かの有名な江石論文:J Thorac Cardiovasc Surg. 1995 Dec;110(6):1745-55.Surgical management of infective endocarditis associated with cerebral complications. Multi-center retrospective study in Japan.では脳塞栓発症後2-4週間空けるべきとしているため、本邦では、これに従うことが多かった。

しかし最近これが見直される傾向にある。

心不全などで待てないときは72時間以内の超急性期でも手術可能。
ラットの実験で、脳梗塞後72時間で脳血液関門が破綻し、その後梗塞性出血を起こしやすいとされている。

無症候性、発症時期不明の脳梗塞については症例に応じて考える。
Black dot (MRI T2)のある場合は注意が必要


IEに伴う塞栓症のうち約2/3は脳神経系
特にブドウ球菌、カンジダ感染、敗血症症例に多い。

2009年8月6日木曜日

CABGの静脈採取法の比較 内視鏡VS直視下

Endoscopic versus Open Vein-Graft Harvesting in Coronary-Artery Bypass Surgery
N Engl J Med 2009;361:235-44.

CABGの静脈採取を内視鏡を使用した方法と直視下に切開して採る通常の方法を比較したものです。

もともとこのStudyはE2F転写デコイーという遺伝子治療を目的にデザインされたものです。
この治療により静脈内膜の過形成を予防し、静脈グラフトの開存性を改善しようという目的でしたが、これが全く効果なく、Studyは失敗に終わったのですが、ここで諦めなかったのはすごい。せっかくこれだけデータを集めて、何かできないか?この治療で差がなかったのは幸いとばかりに、全く違うStudyに変化させ、NEJMに掲載されました。この姿勢はすばらしいと思います。

内視鏡静脈採取法は、米国では約70%がこの方法で採取されるようです。私も一時期、やったことがありますが、日本人女性などで、非常に薄い静脈の場合は、剥離の際に静脈を損傷してしまうことが多かったと思います。また静脈自体の取り扱いが雑になる傾向があります。しかしこれは、複数の小切開でストリッパーを用いて直視下に採取する方法と、ほとんど変わらないような気がします。この方法でも大きな問題はない印象でした。

結論的には、内視鏡法の方が成績が悪い、ということです。グラフトの閉塞率、患者の生命予後、合併症率が統計学的に有意に高率になっています。

この論文の最大の問題点は、1-1.5年のフォローで、静脈グラフト閉塞/狭窄率は、内視鏡法46.7%、直視下38.0%とめちゃくちゃ悪いことです。一般に言われているのに比べて数倍高いです。生命予後に関しても同様です。

前向きランダマイズド試験をやる施設が殺到しそうですね。

2009年8月5日水曜日

僧帽弁手術における視野展開

僧帽弁手術における視野展開

柴田先生(関西労災病院)SJM DVD
Bolling M.D. エドワーズ CD(再生ソフト内臓、PC専用)

僧帽弁手術のポイント
Exposure! Exposure! Exposure!


SVC,IVCを十分剥離、受動する。その後、心房間を剥離する。
SVCの剥離は右PA、LA天井も十分露出し、SVCカニュレーションは、視野が悪いときにSVCを離断できるように、できるだけ頭側。

鈎のかけ方は、2または3本使用。
中隔側を1、2本。深くかけ過ぎない。場合によっては幅の狭いものを使用する。
下方を1本(エステックの場合、大動脈弁用)

2009年8月4日火曜日

ITAとOPCAB

第59回 日本胸部外科学会 ランチョンセミナー9
ITAとOPCAB 樋上先生
エチコンDVD

狭窄が甘い時、ITAはフローの競合にて閉塞することはないが、SVG、GEAは閉塞することがある。ITAでもY compositeは閉塞することがあり、sequantialは閉塞しにくい。

ITA中枢側の剥離がポイント
外側の枝をすべて処理すると、内側にある横隔神経とともに、さらに内側に受動される。

グラフトデザイン
基本 RITA-D-LAD, LITA-Cx 75%可能
代替 LITA-D-LAD, RITA-(LITAあまり-)Cx
→これは驚き。昨日の岡林先生と逆。

Key graftを最後に吻合する
 一瞬の虚血でも事故になりうるので、安全なところからする。
 →これも驚き。

グラフトの長さの決め方
 PA基部左側縁を経由点にする。

2009年8月3日月曜日

OPCABとPAS port system

第37回 日本心臓血管外科学会 ランチョンセミナー4
OPCABとPAS port system 岡林先生
センチュリーDVD

OPCABであっても術後管理はウエットに行う。(体重4kg増ってこともありらしい)
術後脳梗塞予防になるそうだ。ヘパリン使用もいい。

両側内胸動脈のコンポジットはLMTをつくるようなものだから、術前の評価が必要。
鎖骨下動脈起始部、IMA起始部を見ておく。
→うちは評価しているのでスタディになるかも。

両側内胸動脈使用により、CABGredoはなくなるが、AVRredoはあり得る。
RITAを前面に通すことはリスクになるのでtransvers sinusを通してAorta, PA後を通す。
こうすれば、redoになっても、剥離は簡単で、RITAはクランプとAortomyの間にあるので問題なし。

PAS portの後出血は、グラフトを受動して確認する。Woozingは止まる。追加針は簡単。とのこと。
→追加針は難しかったような気がする。ストラットで糸が切れる。

2009年8月2日日曜日

MICS

今まで手術をすることに興味があって、患者にやさしいとされている低侵襲手術に興味はなかった。何より低侵襲の定義自体に疑問があったので真剣に考えてこなかったが、今回、勉強してちょっと意識が変わってきた。
何より美容的にインパクトが高いことで、これによりアピールが高くなると思われる。

今ある道具、技術を使用して、やや大きめ7-10cmの傷でする方法と、MICS専用の機材を使用して(例えばロボット、持針機、糸結び機など)する方法がある。
当然、実行可能性の高いのは前者。

安全マージンが少なくなるので、一つ一つの手技を確実にこなしていくことが大切。
特に体外循環の確立がポイント。送血を入れるときが最もストレスが高い。アメリカにはメスの内臓された送血管があるらしい。FV脱血は、僧帽弁の展開などで悪くなることが多い。頚静脈脱血もする必要がある。アメリカにはFV脱血一本でできるように先端に屈曲防止用のワイヤーが入った脱血管があるらしい。

2009年7月30日木曜日

テンタクルズ




OPCAB用サクション型視野展開補助装置。
住友ベークライトDVDあり。

利点
心尖部吸引型と比較して吸引力が強いが、心外膜損傷が少ない。
多方向への牽引が可能で、心内腔を広げることができ、これにより血行動態を安定させることが可能。
安価

欠点
3本のサクションチューブに、3本の牽引紐があり、術野がやや煩雑になる。

これの凄いところは3本のサクションチューブに逆流防止弁を備え、たとえ1本が剥がれたりして、吸引圧が逃げても、他のサクションチューブ内の弁が閉鎖することにより陰圧が保たれるというところ。心臓の突然の落下を防止することができる。

OPCAB以外にも意外な使用法がありそう。

http://www.sumibe.co.jp/products/03_29_o.html

2009年7月29日水曜日

PPIとClopidogrel

Risk of Adverse Outcomes Associated With Concomitant Use of Clopidogrel and Proton Pump Inhibitors Following Acute Coronary Syndrome
JAMA. 2009;301(9):937-944.


メカニズムから言えば、PPI(omeprazoleなど)は、CYP 2C19代謝と関連するので、同様の代謝経路のclopidogrelの血小板抑制作用を減弱するそうだが、臨床的な重要性は不明であった。

単施設レトログレード試験。アメリカ退役軍人病院。

多変量解析にて、clopidogrel+PPIは、PPI服用無しのclopidogrel単独に比べACS死亡・再入院リスク増加 (補正オッズ比 [AOR], 1.25; 95% 信頼区間 [CI], 1.11-1.41)

この差はわずかである。しかも補正されているとはいえ、明らかにclopidogrel+PPI群のほうが状態の悪い患者が多い。

これだけでは、禁忌というまでには至らないであろう。それより潰瘍出血のほうがはるかに頻度は高く、怖い。

他のCYP 2C19代謝薬剤はどうなのだろう??

2009年7月28日火曜日

IMRの評価

虚血性僧帽弁閉鎖不全症は、ダイナミックな疾患であるため、状況に応じて病態が変化する。特にストレス下で悪化するので、麻酔下では過小評価されやすい。
エコー室、Op室においてヘッドダウンやシェイクハンドなどでの評価がいいかもしれない。

2009年4月6日月曜日

2009年 外科学会メモ

HD患者のうちDMは大きな因子。その他の因子を比べる意味よりも強い。

OPCAB
パスポートを打つ時、動いて困る場合はスタビライザーを使用するとよい。
CAPS:内シャントチューブの代用品で拡張期に末梢に血流を流せる。

スペアリングにおいてラーニングカーブは術前・術中のディシジョン・メイキングであって、テクニック自体はあまり難しくない。

TAR:無名静脈はIMVを結さつするまで剥離。末梢側の剥離はAo背側を切開していき、外膜を逃さないようにする。

EVAR:腎機能低下患者はHDになるまで待つと腎動脈までランディング可能になる。逆にEVARの際に腎動脈狭窄があると治療を同時に行える。

DESは除去困難。BMSは簡単。
ステントグラフトの除去も簡単だが、再建は手術が大きくなり困難となる。ステントグラフトの固定術はうまく行かないことが多い。ステントによる糸のカッティング。ステントを外すと耐久性の心配が出てくる。

フリースタイル
コロナリーボタンはRCAを合わせる。LCAはずれるので新たに作成。

再手術
右心系の圧の高いものは注意が必要。ECCを回す。

AVRリーク
切開が高すぎるなどで、視野が悪く、弁が降りないことが原因。一番深い部分を先に下ろす。
左室形成
クランプ下ルートパーフージョン・ビーティング。利点はビーティングを保てること、エアの混入が防げる。

ゼニス:ショートネック、CIA瘤に適応。シャワーエンボリ、脚閉塞に注意。
エクスクルーダー:angulation, poor accessに可能。タイプ2に注意。
ゼニスフレックスが近いうちに登場。


思い付き
TAAA分枝折れ曲がり防止にリング付ゴアテックスはどうか?
広範囲置換の際、オープンステントを前もって冷やしながら末梢側からやる方法はどうか。多分、そんなに難しくないと思う。直視下で末梢グラフトグラフト吻合が可能。ステントグラフトに縫い代が必要。ステントのない部分

2009年2月12日木曜日

疑問、右房内が血液であふれてしまうこと

先日の右房腫瘍切除時のことなのですが、Total bypass(S&IVC脱血でスネアもして)としているのに、右房内が血液であふれていました。ほとんどは三尖弁から逆流です。Aortic clampも確実にされていましたし、LV ventも追加したのに、全く効果がありませんでした。
どうしてこんなことが起きるのでしょう??
可能性としては、肺分画症、気管支動脈が発達している。などが考えられますかね??
対処法としてはPAventも追加すればよかったかもしれません。
何かご存知の人があれば教えて下さい。

2009年2月10日火曜日

Predictors of recurrence and reoperation for prosthetic valve endocarditis after valve replacement surgery for native valve endocarditis.

Predictors of recurrence and reoperation for prosthetic valve endocarditis after valve replacement surgery for native valve endocarditis.

Fedoruk LM, Jamieson WR, Ling H, Macnab JS, Germann E, Karim SS, Lichtenstein SV.

J Thorac Cardiovasc Surg. 2009 Feb;137(2):326-33. Epub 2008 Oct 23.


IEにて人工弁置換術後の死亡による検討。目的は人工弁の種類の違いがあるのか。エンドポイントはIE再発または死亡

IV drug user/HIV 患者の成績がすごく悪いため。これが全てに影響を与えている。
人 工弁の種類に関しても、IV drug user/HIV 患者のバイアスがあり、単変量解析では差があるが、多変量解析では差がなくなっている。なんと単変量解析では、機械弁のほうが良いという結果であった。ク リーブランドクリニックのホモグラフトの論文と比較しており、成績に差がないことを強調しているが、IV drug user/HIV 患者のバイアスのことがあり、これについて検討しないと差がないことは言えないであろう。
弁輪部膿瘍、菌の種類などは、ほとんど述べられていない。

2009年2月2日月曜日

Coronary-artery revascularization before elective major vascular surgery.

Coronary-artery revascularization before elective major vascular surgery.

N Engl J Med. 2004 Dec 30;351(27):2795-804.Click here to read


McFalls EO, Ward HB, Moritz TE, Goldman S, Krupski WC, Littooy F, Pierpont G, Santilli S, Rapp J, Hattler B, Shunk K, Jaenicke C, Thottapurathu L, Ellis N, Reda DJ, Henderson WG.

先日のタイトルの非心臓手術前の心臓評価ガイドラインの元になった論文.やや古く2004年。

疾患はAAAとASOのみ。血行再建する、しないをランダマイズしている。PCIかCABGは循環器医が決定。
6000人弱の患者のうち、80%は除外されている。主な原因は心リスクが高い。緊急手術。他の重篤な疾患など。510人がエントリー。
心筋梗塞の定義が、心筋逸脱酵素の上昇と心電図変化と、かなり厳しい。おかげで10%以上が心筋梗塞というやや現状とかけ離れた結果になっている。

実際に心筋梗塞を起こす病変はタイトな病変ではなく、マイルドな病変であるから術前の冠血行再建は無意味という趣旨。

2009年1月30日金曜日

Perioperative Cardiovascular Evaluation and Care for Noncardiac Surgery

Perioperative Cardiovascular Evaluation and Care for Noncardiac Surgery

ACC/AHA 2007 Guidelines on Perioperative Cardiovascular Evaluation and Care for Noncardiac Surgery
A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines (Writing Committee to Revise the 2002 Guidelines on Perioperative Cardiovascular Evaluation for Noncardiac Surgery)
Journal of the American College of Cardiology Vol. 50, No. 17, 2007
October 23, 2007:e159-241


心臓の術前評価

非心臓外科手術の術前評価について、 ACC/AHAガイドラインが2007年に改訂されました。
先日から何度か日本の現状と大きな違いがあることを指摘していましたが、具体的に検討してみたいとおもいます。

アルゴリズムを見ていただいたら、一目瞭然です。

1、緊急手術の場合は手術を優先させる。
2、UAP、HF、不整脈、弁膜症の症状がある場合は、その疾患に応じた検査、治療を優先させる。
3、手術が低リスクの場合は、手術優先。
4、4MET(ごみ出しや皿洗いなどの軽労作)以上可能であれば、手術優先。
5、虚血性心疾患、心不全(既往も)、DM、腎機能障害、脳血管病変のリスクファクターのうち
1)3つ以上で 血管手術:検査を考慮
2)3つ以上で中等度リスクの手術、または1つか2つの場合:βブロッカーなどを用いてレートコントロールしつつ手術するか、非侵襲的検査をする
3)リスクなし:手術する
 

大きな変更の1つは、術前負荷試験、冠動脈造影を必要とするグループが非常に少なくなった事です。

PCIに関しては、ステントを入れる前に患者が近い将来手術が必要かどうかを確認する事、非薬剤溶出性ステントの場合は30-45日間、薬剤溶出性ステントの場合は365日間は、延期できる手術は延期する事。さらに、手術が必要になってしまった場合は、アスピリンはそのまま続け、clopidrogelやticlopidinは手術直後に再開する。

たとえばAAAの術前にCAGを行った際、無症状でもタイトな1枝以上病変が見つかることが良くありますが、こういった場合、治療が必要ないのでしょうか?痛い目にあった経験がありますが。。。

2009年1月26日月曜日

Survival benefit of aortic valve replacement in patients with severe aortic stenosis with low ejection fraction and low gradient with normal ejection

Survival benefit of aortic valve replacement in patients with severe aortic stenosis with low ejection fraction and low gradient with normal ejection fraction.

Ann Thorac Surg. 2008 Dec;86(6):1781-9.

Pai RG, Varadarajan P, Razzouk A.

Division of Cardiology, Loma Linda University Medical Center, Loma Linda, California, USA.


Severe AS (UCG; AVA<0.8)の患者の長期予後。
結論はEF低下例であっても、正常例であってもAVRによる生存率の改善が見込めるため、積極的にAVRをするべき。ということ。

EF低下群でPGが出ない患者にAVRが著効することがあるのは、よく知られています。
ただEF正常で、PGも少ない患者というのは、どんな患者なのか、良く分かりません。実際にあまりいない様な気がするんですが。

長期のフォローもされており、非常に良い点を突いていると思います。以下の問題点がなかったら、さらに良い論文になっていたと思います。

問題点は、
1、群分けのバイアス;どうしてもAVR群は、全身状態の良い患者を外科医は選んでしまう。
2、フォロー中にASが進行するとAVR群へ回ってしまう。
3、死因について述べられていない。

2009年1月19日月曜日

Endoleaks following endovascular repair of thoracic aortic aneurysm: etiology and outcomes.

J Endovasc Ther. 2008 Dec;15(6):631-8.
Morales JP, Greenberg RK, Lu Q, Cury M, Hernandez AV, Mohabbat W, Moon MC, Morales CA, Bathurst S, Schoenhagen P.
Cleveland Clinic, Cleveland, Ohio, USA

502例のうち、除外された200例を対象。endoleakは約20%に発症。追加インターベンションタイプ1(79%),3(57%)はが必要だが、タイプ2(24%)は少なく、経過観察で消失することが多い。ただし臨床上一番問題となる原因不明で瘤拡大が認められる症例は除外されている。
Endoleak危険因子はcarotid-subclavian bypass (p = 0.0001) とlengthy aortic coverage by the stent-graft (p = 0.005)
Zenith stent-graft(17%, n = 39) が少なく、Gore or Talent devices(34%, n = 10)が多い。

2009年1月16日金曜日

ヘパリンを使用せずにPCPSを離脱する方法

ヘパリンを使用せずにPCPSを使用した場合、2000回転以下で回路内凝固が進んでしまうため、離脱が難しい。ヘパリンを使えば簡単だが、出血がひどく、ヘパリンを使用できない場合の抜き方は、PCPS回路が詰まらないように、側枝から送脱血管内に生食を流してもらい、さらにシャントを使って回しておくことで凝固を防げる。この間に離脱し、しかもいつでも再開可能である。

2009年1月14日水曜日

ACCF/SCAI/STS/AATS/AHA/ASNC 2009 Appropriateness Criteria for Coronary Revascularization

最近のトピックスです。アメリカの有名な循環器系学会、内科、外科、インターベンション、核医学が集まって、虚血性心疾患に対する治療の新たなガイドラインを作成しています。

以前、医療過誤専門の弁護士さんが講演で言ってましたが、
ガイドラインに反することは、よほどの理由、裏づけがないとやってはいけない。
とのことでしたので、ガイドラインの遵守ということは、現代医療においては大切です。

今回のポイントは、無症状、低リスクの場合、PCIはかなり否定的になっています。
PCIは、2枝病変でLAD中枢病変の場合、適切だが、3枝病変では不明、LMTのある場合は不適切!とされています。これは日本の実情とかなりずれています。

ACSに関しては、発症後12時間以上のSTEMIで症状が安定しているものは、血行再建の適応ないし、緊急CAGの必要すらない。またPCIや血栓溶解療法で責任動脈の治療が成功した後、症状が安定しているなら、他の動脈の血行再建は不適切である。とこれも踏み込んだ意見です。

2009年1月13日火曜日

HOCMの治療

MRI
造影遅延が予後悪い
病理
MRとの関連は興味のあるところ。

肥大型心筋症の外科治療の適応
Class Ⅰ :
 1.NYHA Ⅲ度以上の症状を有し,薬剤抵抗性で,安
静時に50mmHg以上の左室流出路圧較差を認める
HOCM
 2.意識消失発作から回復し,安静時ないし薬物負荷
時に50mmHg以上の左室流出路圧較差を認め,薬
物抵抗性のHOCM
Class Ⅱ :
 1.心症状は軽度ないし認めないが,薬剤抵抗性の,
安静時に50mmHg以上の左室流出路圧較差を認め
るHOCM
Class Ⅲ :
 1.無症状ないし薬物療法にてコントロール可能な
HOCM
 2.症状はあるが運動あるいは薬物負荷試験にても左
室流出路圧較差のない肥大型心筋症

肥大型心筋症治療のガイドライン

I.日常生活の管理

運動:軽いスポーツを除き、原則禁止する。

性生活:予め充分な内科治療を受け、安定した状態にあることを前提とする。

妊娠:出産時には抗生物質の投与が考慮される。

飲酒・喫煙:好ましくない

遺伝カウンセリング:遺伝相談が必要な場合がある。

II.薬物療法

無症状または軽度症状の場合:ベータ遮断薬、ベラパミル

心不全症状がある場合:ベータ遮断薬、ベラパミル、ジルチアゼム、ACEI,ARB,利尿薬

不整脈がある例:突然死予防のためにはアミオダロン、カテーテルアブレーション、心房細動例ではワーファリンの投与

III.非薬物療法

NYHAⅢ以上、薬剤抵抗性、圧較差50mmHg以上の閉塞性肥大型心筋症の場合には心筋切開・心筋切除などの外科的治療や中隔塞栓術が考慮される。また、突然死のハイリスク例ではICD植込みの対象となり得る。

2009年1月7日水曜日

INDICATIONS FOR SURGERY OF VSD

INDICATIONS FOR SURGERY OF VSD

 先天性心疾患のなかでもっとも頻度の多い疾患で、その中でも約80% を占める膜様部欠損や、筋性部欠損では自然閉鎖や縮小の可能性もあるので、内科的管理を第一に考える。その中でも、肺高血圧を合併している症例や、心不全や呼吸不全の強い症例は乳児期に手術を行う必要がある。特にDown症候群に合併したVSDでは、早期に不可逆性の肺血管病変を合併する危険があるので、3~6ヶ月以内に手術を行う。

 乳児期以降まで待機できた患者でも、肺血流量が多い場合には手術適応となる。一般に、肺体血流比が2.0以上では手術を勧めることになる。肺体血流比が1.5以下では手術の適応は無いが、肺体血流比が1.5と2.0の間では、呼吸器感染が頻回であったり、発育が遅れたり、他の社会的要因で手術適応となる場合がある。IEに注意が必要。

Adults with small restrictive VSDs who are asymptomatic often require no surgical intervention and should receive endocarditis prophylaxis as necessary. In general, IF THE QP:QS IS GREATER THAN 1.5:1 AND THE CALCULATED PULMONARY VASCULAR RESISTANCE IS UNDER 6 UNITS/M2, SURGICAL CLOSURE OF A VSD CAN BE PERFORMED SAFELY AND IS RECOMMENDED. The development of a double-chambered right ventricle with outflow obstruction is also an indication for operative intervention. The occurrence of infective endocarditis in an adult with a restrictive VSD is a rare but compelling indication for repair of the defect. In adults with VSD and Eisenmenger's syndrome, heart-lung transplantation or lung transplantation with closure of the defect may be considered.

2009年1月5日月曜日

Aortic valve replacement in patients aged 50 to 70 years: improved outcome with mechanical versus biologic prostheses.

Aortic valve replacement in patients aged 50 to 70 years: improved outcome with mechanical versus biologic prostheses.

Brown ML, Schaff HV, Lahr BD, Mullany CJ, Sundt TM, Dearani JA, McGregor CG, Orszulak TA.

J Thorac Cardiovasc Surg. 2008 Apr;135(4):878-84; discussion 884. Epub 2008 Mar 4.


Mayo クリニックからの論文。最近の流れでは、AVRで生体弁のほうがいいと言う意見が多いものの、今回はこの流れに逆行し、機械弁のほうが良いとしている。選 択は外科医の好み。レトロスペクティブ。年齢、性別、CABG、弁のサイズのみマッチさせている。死亡率に、大きな差が認められている。ランドマイズドト ライアルの必要性を唱えている。

疑問;1、周術期死亡率が生体弁で5.5%(機械弁1.8%)というのは、かなり多すぎる。これを考慮しても、生存曲線の傾きは生体弁のほうがきつい。2、ランダマイズではないので、バイアスの関与は否定できない。3、マッチの方法が中途半端。


Comment in:
J Thorac Cardiovasc Surg. 2008 Oct;136(4):1101-2; author reply 1102.
やはりバイアスの存在を指摘している。返答は大きなバイアスはない。