2009年8月6日木曜日

CABGの静脈採取法の比較 内視鏡VS直視下

Endoscopic versus Open Vein-Graft Harvesting in Coronary-Artery Bypass Surgery
N Engl J Med 2009;361:235-44.

CABGの静脈採取を内視鏡を使用した方法と直視下に切開して採る通常の方法を比較したものです。

もともとこのStudyはE2F転写デコイーという遺伝子治療を目的にデザインされたものです。
この治療により静脈内膜の過形成を予防し、静脈グラフトの開存性を改善しようという目的でしたが、これが全く効果なく、Studyは失敗に終わったのですが、ここで諦めなかったのはすごい。せっかくこれだけデータを集めて、何かできないか?この治療で差がなかったのは幸いとばかりに、全く違うStudyに変化させ、NEJMに掲載されました。この姿勢はすばらしいと思います。

内視鏡静脈採取法は、米国では約70%がこの方法で採取されるようです。私も一時期、やったことがありますが、日本人女性などで、非常に薄い静脈の場合は、剥離の際に静脈を損傷してしまうことが多かったと思います。また静脈自体の取り扱いが雑になる傾向があります。しかしこれは、複数の小切開でストリッパーを用いて直視下に採取する方法と、ほとんど変わらないような気がします。この方法でも大きな問題はない印象でした。

結論的には、内視鏡法の方が成績が悪い、ということです。グラフトの閉塞率、患者の生命予後、合併症率が統計学的に有意に高率になっています。

この論文の最大の問題点は、1-1.5年のフォローで、静脈グラフト閉塞/狭窄率は、内視鏡法46.7%、直視下38.0%とめちゃくちゃ悪いことです。一般に言われているのに比べて数倍高いです。生命予後に関しても同様です。

前向きランダマイズド試験をやる施設が殺到しそうですね。

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